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あい氏の奮闘記【原毛(根付き)の処理 ①選毛】

気付くと入社して丸二年。
ブログもすっかり間が開いてしまった。
いかんいかん。
この約二年もの間の多くの経験や感動を伝えなければいけなかった。
そんな訳で遅ればせながら、その一つ一つ、語らせて頂くことにする。

【原毛(根付き)の処理 ①選毛】
原毛の処理。
ここから筆作りの全てが始まる。
まずは毛の選別「選毛」だ。

今回は根付き(根元に薄皮が残り束になっている原毛)の「ヒゲ」(山羊の尻尾の毛)の選毛に挑む事となった。
根付きの「ヒゲ」がたっぷりと入った大きな袋をK師匠が覗き込みながら軽くかき混ぜる。
そして見定めた一つを取り出して言った。
「こんな感じの良い毛のものをよけておいて(取り分けておいて)。」
毛が根元から先まで細く、ほつれ無く伸びていて柔らかいと説明してくれた。
「ヒゲ」は比較的安価な毛だが、この毛は師匠に認められた「選ばれしヒゲ」である。


なるほど、他の「ヒゲ」と比べてみると、見た目や感触が確かに違う。良い感じだ。
筆作りで最も経験が必要となる工程がこの「選毛」だとも聞く。
入社間もない私にできるのか?
いや、そもそも私がやっても良い工程なのか?
戸惑いながらも見本を頼りに「選ばれしヒゲ」を探す。


そして、これは、と感じたものを師匠が選んだものと比較した。
違うか?
ならばこれは?
こいつはどうだ?
しかし、どれもこれも見本と比べると何か物足りない様に感じてしまう。


手には取っても、見つめては撫でるを繰り返すばかり。
いいような悪いような、悪いようないいような…。
いかん、比べれば比べる程わからなくなる!
「選ばれしヒゲ」は一向に増えない。
めまいにも似た焦りが私を襲う。


と、その時、気を失いそうな私を見兼ねてか、師匠から声が掛かった。
「私がもう一度見るから、気になったら出しておいて。」
そう、最初から師匠が満足する「選毛」をやろうなどと大それた事を考えてはいけなかったのだ。


師匠の声に救われた私はようやく一つ二つと取り分けを始めた。
そして最終的にいくつかの「選ばれしヒゲ」の候補を選び出し、私にとって初めての「選毛」が終了した。


ちなみに師匠が行う「選毛」は良い毛を選ぶだけではない。
この毛はあの筆に使える、これならあれに、そういった筆の種類に応じた選別も行うのだ。
原毛を仕入れる際の目利きに「選毛」の技が駆使されている事も忘れてはならない。


それらは長きに渡り多種多様な筆を作り続けた経験があって初めて成し得る熟練の技と言えよう。
さて、続いて根付きを待ち受けるのは根元に残った薄皮の除去である。
この工程には手作りの機械が使われるのだが、これについてはまた改めて。

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