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筆業界の一社として「熊野筆ピンチ」の現状と未来

コロナ禍で日常生活、働き方、環境が随分様変わりしました。
世界中で人・物流も制限され、各界に影響を及ぼしています。
先日、中国新聞に 【熊野筆ピンチ】の記事が掲載されました。

https://www.chugoku-np.co.jp/local/news/article.php?comment_id=757766&comment_sub_id=0&category_id=112

熊野筆だけではありません。
日本の筆業界全体のピンチなのです。
多くの方が厳しい状況に置かれている中で 今回の筆業界のピンチ。
我が社からインターネットを通して発信させて いただきますことお許しください。

数年前からイタチ毛の度重なる値上がりに悩まされてきました。
特にイタチ毛の高騰はここ数年で約10倍。
イタチ毛に限らず、全ての原毛が値上がりしています。

記事の内容を補足&整理しますと

日本では、イタチは絶滅危惧種として追加されており、 捕獲ができません。

中国では、イタチの捕獲は可能ですが、法令変更により

野生動物の取引が禁止となりました。

野生動物なので養殖も不可能です。希少化はさらに進むと思われます。

原毛のほとんどが中国からの輸入です。その影響もあり、ますますイタチ毛の仕入が困難になります。

困った困ったとつぶやくレベルは終わり、深刻な問題へと発展してます。

お客様、取引先のみなさま、そして、この文章を読んでいただいているあなたにご理解頂きたいことがあり、本日は、現在の率直な想いを記させていただきます。

みなさま、例えばこんなことを感じることはございませんか?

・昔食べた野菜の味を思い出せますか?
・味は明らかに薄くなっていませんか?
・ホタルやバッタ、ミンミンゼミ 見かけなくなりましたよね。
・昔の衣類は、今よりしっかりしてましたよね。
・セーター類も、今ほどすぐに毛玉になったりクタクタになることはなかったと思います。

このような事を、全ての原毛に焦点を当ててみますと
・年々値上がりする原毛(値上げ率もここ数年ひどい状況です)
・毛質は昔に比べると弱く悪くなっています。
・自然環境の変化で土壌は痩せてしまい
・栄養価の低い植物を食べていること
・温暖化で身も毛も締まっていません。

 

ここ数年、皆様から届く声をご紹介させてください。
・この筆、昔はもっと〇〇でよかった!
・質は現状のままなら値上がりしても納得だけど 値上がりしたのに質は低下しているではないか!
・すぐに毛が切れたり、抜けたりして寿命が短い!
・穂に腰がない!
・穂が細くなってる!前はもっと先も腰の部分もしっかりしていた!
・馬毛〜白フリについて 最近の極純は純白とあまり変わらないじゃない!

馬のたてがみである「フリ(純白や極純)」に限らず、天尾も質は随分変わってしまいました。

取引先業者様を通してお客様の声をお聞きしたり、返品や交換依頼を受けることもあり、申し訳ない思いと、悔しさの中でスタッフ達は対応しています。

みなさま。
毎日毎日何十年も、原毛を扱っている職人がそれに気づいてないと思われますか。
新しい原毛を仕入れる度に、配合や作り方、微妙な工夫、試行錯誤、本当に日々悩みながら
当時の筆の質に近づくように何度も何度も試作を繰り返しています。
何度も申し訳ないと思いながら「これじゃダメ」と、ダメ出しをして来ました。
また、お客様の声も正直に職人に伝え、共に原料の配合や組み方を研究し、出来るだけ現状に近いように作ろうと努力しています。

当時の原毛で筆を作らせてあげたい。
昔は職人の技術だけでなく原毛も良かったのです。今はどんな技術があっても原毛の質そのものは変えることはできません。

古くから伝わる技術、伝統工芸ですが、あまりにも原料、環境の変化で、技だけでは克服できない現状もあります。お客様の声は間違っていませんし、いつも使ってくださっているからこそ、筆を持って書かれる際の質の変化に敏感です。

私達に期待してくださっているからこそのお声と受け止めていますが、否定的な言葉を聞いてると、コロナだけでも辛い現状がさらに辛くなります。

しかし、私達は、昔のよい筆を手に、感触、感覚を覚えています。
ここで諦めては、未来の筆文化(日本文化)を継承する事はできないのではないかと本気で思っています。
そして、伝えて行かなければと熱い想いで日々奮闘しています。

お客様のご要望に応えようとするとコストはアップします。けれどご希望の予算に合わせるには人工毛、化学繊維を原毛に配合することもあります。
昔の原毛在庫が豊富な筆屋さんは別ですが、天然の原毛だけを使用して同じ筆は作れないのが現状です。
けれど、どうしてもそれを嫌い否定する方もおられます。

そんな中、ある書家の先生から一筋の光をいただくお声をいただきました。

「どうしてみんな化学繊維を嫌うのかね?恐らく単なるイメージだと思うんだよね。化学繊維が混毛されていても充分に書き味はいい。
 問題ないですよ。
 職人さんに頑張って作ってもらいたい!」

心からありがたいお言葉です。多くの先生方にご理解いただきたいと願っています。
製造所によっては、原毛がない為 お客様の求める筆を作りたくても作れない。。。職人として何十年もやってきて これほど悔しいことはありません。

高くなった原毛を仕入れても、価格競争が激しいため 職人が一番苦しいのです。
これでは新たな職人を育成することも難しい。

先日、主にイタチ毛の筆を作る職人さんと共に 今後のことをじっくり話し合いました。
私達は諦めていません。

今、何ができるのか?今あるものでどう作っていくか?今はまだイタチ毛ほど優れた伸びのいい毛質に変わる毛が見つかりませんが、毛の配合方法などを考え、時代と共に移り変わる筆を供給できるように、よりよい筆作りへの追求・研究をしてまいります。
この夏以降、筆の供給が更に変化していくことと思います。
これまで同様に、皆様のお声は真摯に受け止め、筆業界全体で解決して行きたいと願っています。

私たちは、熊野筆という枠も超えて、書の伝統を未来に残さなくてはいけないと使命を新たに
この問題をいい機会ととらえ、これからの進む道筋を、関係者のみなさまと探って行きたいと思っております。
この関係者とは、取引先のみなさま、お客様、書道界の先生方、筆作りに携わる方、そして最後までこの文章をお読みくださったあなたです。
是非、一緒になって、よりよい未来の書のありかたをご想像いただけたら嬉しく思います。

本日は、最後までお読みいだたき、本当にありがとうございました。

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