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あい氏の奮闘記 ~穂首の櫛(くし)かけ編~

さて、入社から約3ヶ月。
思いもよらず苦戦した作業と言えばあれだ。
「穂首の櫛かけ」
糊で円錐形に固められ、根元を縛られた穂首に櫛を掛けて毛をほぐす。その名の通りの作業だが、実に手強い相手だった。


「穂先から始めて根元までしっかりと。」


特別テクニックが必要という訳ではなさそうだ。
入社早々の私にはうってつけの作業と言えよう。
渡された櫛は金属製で櫛先は鋭い。
これ、刺さるな。要注意だ。
そして目の前の穂首の山、結構な数である。

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この作業、簡単そうだが時間がかかりそうだ。
午後は別の作業が待っている。
早速始めよう。
言われた通り穂先から根元に向けて、先輩職人のOさんが見せてくれたお手本のようにリズミカルに櫛を掛けて…。
そう思ったがあっさり手が止まる。

穂首が思いのほか固く結着しており、櫛が通らないのだ。
櫛が穂首に中途半端に刺さった状態で櫛を持つ右手と穂首を持つ左手、壮絶な引っ張り合いが始まった。
この勝負、穂首をつまむ左手が劣勢だ。
つまむ箇所が小さく、力を込めた親指の先が悲鳴をあげる。
しかし櫛は抜けないっ!

「穂先から、穂先から!」

大師匠のKさんから声が飛ぶ。
いかん、少々作業が粗かったか。
穂首に食い込んだ櫛を抜き、改めて穂先からピッチを狭めて櫛を運ぶ。
櫛掛けの前に穂首を軽く指で揉みほぐすと良いとも教わる。
次第にピッチも上がってきた。

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そうそう、このペース、このペース。
キャベツの千切りのごとく櫛掛けのリズムを刻む。
鋭い櫛先は親指の爪でガード。
どうだ、これなら刺さるまい。

が、しかしだ。

ガードした親指ではなく、その相方、人差し指に金櫛が牙を剥いた。
痛っ!やられたか⁉︎
痛みが走った箇所を注視…。
少し遅れて血が滲む。
や、やられたぁ!

とにかく穂首に血が付いたらマズい。
「す、すみません、絆創膏ありますかぁ⁉︎やってしまいました!」
あたふたする私に、先輩職人IKさんから待ってましたとばかりに「液体絆創膏」を使うよう指示が出る。
「液体絆創膏」、キャップを開けると接着剤の匂いだ。
なるほど、これなら血も止まる。

そして作業を継続。
しかし、結局予定した午前中に作業は終わらず、多くの穂首を残す結果となった。

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無念。
こちらと言えば左手人差し指に櫛が刺さり、穂首をつまみ続けた親指の先は既に感覚がない。
ダメージは大きい。

同時入社のK君が言った。
「親指の痛み、1週間は取れないですよ。」
まじかっ。
「穂首の櫛掛け」恐るべし。
(完)

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