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あい氏の奮闘記 ~穂首の根元の角を焼く編~

もう梅雨??と思わせる天気予報ですが、たまに寒い朝があったりと季節の変わり目を日々感じるこの頃です。

先日のブログにも書きました。
当社には、今年新しい風が吹いてます。
どちらも違う職種から来られたお二方。

営業さんは「けいちゃん日記」として、引続き、ブログに登場頂きます。
今日登場頂くのは、職人さん
題して「あい氏の奮闘記」
こちらもシリーズ化を期待して、お願いしてみました。

ドキドキわくわくが伝わる文章
こういう内容ってなかなかないと思いノーカットでお届けします!

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【ブログを始める】
伝統工芸品である熊野筆の製造に携わりたい。長年勤めた食品メーカーを早期退職し、思い一つで飛び込んだこの職場。筆の知識ゼロで入社した齢56の私に、会社からブログ開始の命が下る。

こいつは困った。

ここ数十年、報告書以外の書き物をほとんどしなかった私に筆作りの作業をうまく伝える文章が書けるだろうか。
同時に入社したK君のブログは既に始まっている。ここは腹をくくるしかなさそうだ。

稚拙でまとまりのない文章となる事はご容赦いただくとして、筆作りの面白さ、奥深さを僅かでも感じとって頂けるとありがたい。
なお、K君のブログ「けいちゃん日記」、とてもうまく書かれている。おすすめである。

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【穂首の根元の角を焼く 前編】
筆作りの工程は70を超える。主要となるいくつかの工程には名前が付けられているが、その他多くの工程には名前がない。今日の作業「穂首の根元の角を焼く」もその一つである。
軸に差し込まれる前の筆の穂の部分は穂首と呼ばれ、穂先とは逆、軸に差し込む側は麻糸で縛られ、束ねた面が焼き固められている。その焼かれた面のエッジ部分を溶かすように焼き、角を落とす。

これが今日の作業だ。

穂首を軸に差し込む際、角が落ちている方が都合が良いため、これを行うとのこと。まずはベテラン職人の実演を見せて頂きながら作業ポイントを確認する。
専用の焼きゴテを使い、穂首を回しながら角を焼く。
うむ。簡単そうな作業だ。
しかし騙されてはいけない。入社から2カ月弱、簡単そうに見える作業に何度苦戦を強いられたことか。ここはひとつ、気合いを入れて臨もうではないか。
左手で穂首の先側をつまみ、右手で持った焼きゴテで根元側の角を溶かすように焼く。左手首のひねりで焼けるのは1/4周程度だ。その為、焼きゴテを持つ右手で穂首を回す。この時、一瞬手にした焼きゴテが不安定になるがこれを落とすわけにはいかない。赤く焼けたコテの先が大惨事を容易に想像させる。

コテを握る右手に力が入る。
角を焼く際に穂首の本体が焼かれないよう細心の注意も必要だ。
任された個数は500個弱。思うように数が進まない。
緊張と焦りにコテの熱が加わり、額に汗がにじむ。
やはりそうだ。簡単そうに見えたこの作業、相手にとって不足はない!

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【穂首の根元の角を焼く 後編】
「穂首の根元の角を焼く」この作業を始めて気付くと2時間が過ぎている。
仕上がった数より処理を待つ数の方がまだ多い。先は長いぞ。
しかし、不安視されていた右手と焼きゴテはいつしか見事に一体化し、もはやコテを落とす不安は微塵もない。
よぉし、いい感じだ。ペースも上がっている。
その後順調に作業は進む。そして昼休みだ。

この作業にもだいぶ慣れてきた。よし、午後は更にペースを上げるぞ。
しかし、午後の作業開始早々に痛いミスを犯すこととなる。
それまでと同じように焼きゴテを当てた穂首が突然形状を崩し始めたのだ。

こ、これは何としたことかっ!

目を凝らした私は瞬時に事態を把握する。
穂首を縛っている麻糸が無残にも焼き切れていたのだ。これでは穂首もたまらない。

しまった!慎重さを欠いていたか?

後悔するも今の私にはどうすることも出来ず、先輩職人に状況を説明し詫びを入れる。この状態はどうやら手直しが可能らしく、そのまま置いておくよう指示が出る。少し安堵する。
この一件で上がりかけた作業のペースが再びトーンダウンしたことは言うまでもない。

それでも何とか作業を進め、ようやく最後の1個を手に取る。私が予定した終了時間を大きくオーバーしていた。
敗北感に包まれながらも、私は思う。
「慣れた頃にミスが起こる」全ての作業に通じる忘れてはならない教訓だ。また会おう、「穂首の根元の角を焼く」作業よ。次は負けないよ。
(完)

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以上「あい氏の奮闘記」でした。
いかがでしたか?
プロの職人の技をお話しを聞く機会はあれど、こうした目線の工程紹介は珍しいと思います。筆にお詳しい方も興味を持って頂けたのではないでしょうか。

ブログでは、文章と写真での紹介となりましたが、動画撮影もしています。
Youtubeのショート動画
インスタグラムのリール動画
にもアップしています。リール動画の方が少し長めです。
合わせて見て頂けると嬉しいです。

そして、数年後にあい氏にこの動画を見て頂き、感想を紹介できたらと思っております。
あい氏の成長をみなさんと共に見守ろうではありませんか。
と、あい氏風にまとめてみました。

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